リサーチ・マーケティング
【5分でわかる】ゼロから学ぶ!定量調査・定性調査の基本知識
はじめに
ビジネスの世界では、データに基づいた意思決定が成功への鍵となります。そのためには、定量調査と定性調査の両方を理解し、適切に活用することが不可欠です。定量調査は数値によって意思決定の「量」を測るのに対し、定性調査は「質」を深く掘り下げることで、ビジネスの背後にある理由や動機を明らかにします。これらの調査方法をマスターすることで、市場の動向を正確に捉え、顧客のニーズに応える戦略を立てることが可能になります。今回の記事では、「定性分析」「定量分析」についてそれぞれ解説いたします。
目次
定性調査
定性調査とは、数値や統計ではなく、人々の意見や感想、経験などを詳しく聞き出す調査方法です。購買理由や購買プロセス、要望や悩みといった、数値化できない情報を得られます。
定性調査をマーケットリサーチに活かすには
マーケットリサーチに定性調査を用いることで、顧客の本音や隠れたニーズを掘り下げ、製品やサービスの改善点を見つけ出すことができます。また、顧客の感情や反応を把握することで、数値化が難しい側面についての戦略を練ることが可能になります。さらに、数字の集計だけではわからない市場の新しいトレンドをいち早くキャッチし、ビジネスに活かすこともできます。そして、顧客の具体的な体験をもとにしたエピソードは、数字だけでは伝わらない商品やサービスの魅力を伝えるのに非常な手段です。
定量調査
定量調査とは、数値を用いてデータを収集し分析する研究方法です。この方法では、集計可能な選択式のアンケートや統計データなど、数値化できる情報を扱います。分析には、平均値、標準偏差、相関関係などを計算する統計学的手法が用いられます。大量のデータから傾向やパターンを見つけ出し、客観的で説得力のある結論を導き出すことができます。
定量調査をマーケティングリサーチに活かすには
定量調査を活用するためには、まず調査の目的をはっきりさせることが重要です。次に、定めた目的に合わせた調査設計を行い、適切なデータ収集方法を選定します。実際にデータを収集した後、統計的な分析を通じて有意な結果を導き出し、それらの結果を基に市場の傾向を解釈します。そして、得られた知見をもとに商品開発やマーケティング戦略などのビジネス戦略を立案することができます。このように定量調査は、特定の仮説を検証したり、性別や年齢といった異なる集団間での比較を行ったりする際に有効です。また、結果は数値として表されるため、客観的で再現性があります。
各調査の具体例と長所短所
続いて、それぞれの調査の具体例と長所・短所について解説します。
定性分析の具体例
- 1対1でのインタビュー
- グループインタビュー
- 行動観察
- 覆面調査
長所
- 消費者のリアルな意見を知ることができる。
- 仮説とは異なる予想できなかった結果から新たなアイデアの元となる。
短所
- 主観的なデータであり、分析が難しい。
- 自ら集める一次データであるため一定量のデータを集めるには、時間が掛かる。
- インタビュアーにも適切な情報を引き出せるスキルが求められる。
定量分析の具体例
- 選択式アンケート
- インターネットを用いた調査
- 家庭での実態調査
長所
- 膨大なデータから客観的な結果を得ることができる。
- 調査結果を表やグラフでわかりやすく可視化できる。
短所
- データ分析のノウハウが必要。
- インターネットを用いた調査では二次データ(公開されているデータといった自ら集めたではないもの)を扱うため、適切なデータを抽出する必要がある。
実際の企業における活用事例
実際に定量分析・定性分析を行なっている企業の具体的な活用事例を紹介します。
定性調査の実施例
企業が実際に行っている定性調査とその効果を紹介します。
メルカリ
メルカリはユーザー中心のサービスを提供するために、ユーザー・インタビューとユーザビリティテストという二つの主要な調査方法を用いています。
ユーザー・インタビューでは、プロジェクトの進行中でもリサーチを行い、仮説を検証するために実施されています。このインタビューにより、ユーザーの意見を直接聞き出し、プロジェクトに必要な変更を迅速に反映させることができます。また、組織が直面している課題に対する解決策の仮説が正しいかどうかを検証するためにも使用されます。
ユーザビリティテストとは週に1回行われ、新規および既存のユーザーに対してメルカリのアプリを実際に使用してもらい、その操作を観察します。これにより、ユーザーがアプリをどのように使っているか、どの機能が使いやすいか、または問題があるかを把握し、サービスの改善に役立てています。
メルカリはこれらの調査を通じて、UX(ユーザーエクスペリエンス)の質を高め、ユーザーが自然と「使いやすい」と感じるようなサービスを目指しています。ユーザーの生の声を聞くことで、データだけでは捉えられないUXの要素を改善し、サービスの微調整を行いながら、ユーザーにとって最適なプラットフォームを作り上げています。
定性調査と定量調査の組み合わせ
定性調査と定量調査組み合わせて使用した具体例について紹介します。
キリン
キリンは本麒麟の開発以前から第3のビール市場に参入していましたが、サントリーの「金麦」やアサヒビールの「クリアアサヒ」などの競合他社に市場の首位を奪われていました。キリンは12種類もの新商品を市場に投入しましたが、いずれも定着には至りませんでした。
そこでキリンは、新商品開発にあたって定量調査と定性調査を徹底的に行いました。定量調査では、失敗した商品の購買層や売り上げなどのデータを分析し、なぜ失敗したのかその要因を調査しました。一方で定性調査では、消費者に直接会って意見を聞き、試作品に対する反応を確認する会場調査やインタビューを実施しました。これにより、消費者が本当に求めている商品の特性を理解することができたのです。
上記調査結果から本物のビールに近いおいしさを実現しながらも価格は第3のビールとしての手頃な価格を求めていることがわかりました。ビール並みの品質を実現するためのコストがかかり、またビールの売上に影響を与えるリスクがあったものの、上記調査結果を基に、このリスクを冒してでも市場に投入する価値があると判断し、開発に踏み切りました。結果、2019年2月までに4億本を売り上げる大ヒット商品となりました。
本麒麟の開発経緯から新商品開発において、定量的なデータと定性的な消費者の声の両方をうまく組み合わせることの重要性がわかります。
まとめ
「定性調査と定量調査とはなにか」から「具体的な実施例」までご理解いただけかと思います。定性調査と定量調査の長所短所を理解し、うまく活用することにより、読者の皆様のマーケッティングリサーチがうまくいくことを願っています。
いかがでしたでしょうか? 以上でゼロから学ぶ!定量調査・定性調査の基本知識を終了します。定性調査と定量調査を行いたいが、戦略を立案したいが、ノウハウ・人員がないなどお困りでしたら弊社のサービスをご利用ください!